start end

title

 実際あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたのだと言いたくなったほど私にしっくりしたなんて私は不思議に思える――それがあの頃のことなんだから。

小夜/SAYO

 私はもう往来を軽やかな昂奮に弾んで、一種誇りかな気持さえ感じながら、美的装束をして街を闊歩した詩人のことなど思い浮かべては歩いていた。

冥鳴ひまり

汚れた手拭の上へ載せてみたりマントの上へあてがってみたりして色の反映を量はかったり、またこんなことを思ったり、  ――つまりはこの重さなんだな。――

春歌ナナ

 その重さこそ常つねづね尋ねあぐんでいたもので、疑いもなくこの重さはすべての善いものすべての美しいものを重量に換算して来た重さであるとか、思いあがった諧謔心かいぎゃくしんからそんな馬鹿げたことを考えてみたり――なにがさて私は幸福だったのだ。

麒ヶ島宗麟

 どこをどう歩いたのだろう、私が最後に立ったのは丸善の前だった。

雨晴はう

平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた。

東北きりたん

「今日は一つ入ってみてやろう」そして私はずかずか入って行った。

白上虎太郎

 しかしどうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げていった。

中国うさぎ

香水の壜にも煙管きせるにも私の心はのしかかってはゆかなかった。

猫使アル

憂鬱が立て罩こめて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。私は画本の棚の前へ行ってみた。

東北イタコ

Books

檸檬 NEW

梶井基次郎

夢十夜

夏目漱石

走れメロス

太宰治

雨にも負けず

宮沢賢治

羅生門

芥川竜之介