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書籍、学生、勘定台、これらはみな借金取りの亡霊のように私には見えるのだった。

九州そら

 ある朝――その頃私は甲の友達から乙の友達へというふうに友達の下宿を転々として暮らしていたのだが――友達が学校へ出てしまったあとの空虚な空気のなかにぽつねんと一人取り残された。

東北きりたん

私はまたそこから彷徨さまよい出なければならなかった。何かが私を追いたてる。

東北イタコ

そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ち留どまったり、乾物屋の乾蝦ほしえびや棒鱈ぼうだらや湯葉を眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町を下さがり、そこの果物屋で足を留とめた。

Voidoll

ここでちょっとその果物屋を紹介したいのだが、その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった。

四国めたん

そこは決して立派な店ではなかったのだが、果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられた。

春歌ナナ

果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって、その台というのも古びた黒い漆塗うるしぬりの板だったように思える。

麒ヶ島宗麟

何か華やかな美しい音楽の快速調アッレグロの流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面――的なものを差しつけられて、あんな色彩やあんなヴォリウムに凝こり固まったというふうに果物は並んでいる。

中部つるぎ

青物もやはり奥へゆけばゆくほど堆うず高く積まれている。――実際あそこの人参葉にんじんばの美しさなどは素晴すばらしかった。

ぞん子

それから水に漬つけてある豆だとか慈姑くわいだとか。  またそこの家の美しいのは夜だった。

雨晴はう

Books

檸檬 NEW

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