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そのうち船は例の通り黒い煙けぶりを吐いて、通り過ぎてしまった。
冥鳴ひまり
自分はどこへ行くんだか判らない船でも、やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用する事ができずに、無限の後悔と恐怖とを抱いだいて黒い波の方へ静かに落ちて行った。
春歌ナナ
第八夜
床屋の敷居を跨いだら、白い着物を着てかたまっていた三四人が、一度にいらっしゃいと云った。
雨晴はう
真中に立って見廻すと、四角な部屋である。窓が二方に開あいて、残る二方に鏡が懸っている。
春歌ナナ
鏡の数を勘定したら六つあった。
自分はその一つの前へ来て腰をおろした。すると御尻がぶくりと云った。
雀松朱司
よほど坐り心地が好くできた椅子である。鏡には自分の顔が立派に映った。顔の後うしろには窓が見えた。
No.7
それから帳場格子ちょうばごうしが斜はすに見えた。格子の中には人がいなかった。
波音リツ
窓の外を通る往来の人の腰から上がよく見えた。
庄太郎が女を連れて通る。
猫使ビィ
庄太郎はいつの間にかパナマの帽子を買って被っている。女もいつの間に拵らえたものやら。ちょっと解らない。
四国めたん
双方とも得意のようであった。よく女の顔を見ようと思ううちに通り過ぎてしまった。
春歌ナナ
そのうち船は例の通り黒い煙けぶりを吐いて、通り過ぎてしまった。
冥鳴ひまり
自分はどこへ行くんだか判らない船でも、やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用する事ができずに、無限の後悔と恐怖とを抱いだいて黒い波の方へ静かに落ちて行った。
春歌ナナ
第八夜 床屋の敷居を跨いだら、白い着物を着てかたまっていた三四人が、一度にいらっしゃいと云った。
雨晴はう
真中に立って見廻すと、四角な部屋である。窓が二方に開あいて、残る二方に鏡が懸っている。
春歌ナナ
鏡の数を勘定したら六つあった。 自分はその一つの前へ来て腰をおろした。すると御尻がぶくりと云った。
雀松朱司
よほど坐り心地が好くできた椅子である。鏡には自分の顔が立派に映った。顔の後うしろには窓が見えた。
No.7
それから帳場格子ちょうばごうしが斜はすに見えた。格子の中には人がいなかった。
波音リツ
窓の外を通る往来の人の腰から上がよく見えた。 庄太郎が女を連れて通る。
猫使ビィ
庄太郎はいつの間にかパナマの帽子を買って被っている。女もいつの間に拵らえたものやら。ちょっと解らない。
四国めたん