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「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと思うたのじゃ。」  下人は、老婆の答が存外、平凡なのに失望した。

ずんだもん

そうして失望すると同時に、また前の憎悪が、冷やかな侮蔑と一しょに、心の中へはいって来た。

ずんだもん

すると、その気色が、先方へも通じたのであろう。

青山龍星

老婆は、片手に、まだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、蟇のつぶやくような声で、口ごもりながら、こんな事を云った。

九州そら

「成程な、死人の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう悪い事かも知れぬ。

もち子さん

じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。

後鬼

現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸ばかりずつに切って干したのを、干魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。

麒ヶ島宗麟

疫病にかかって死ななんだら、今でも売りに往んでいた事であろ。

猫使ビィ

それもよ、この女の売る干魚は、味がよいと云うて、太刀帯どもが、欠かさず菜料に買っていたそうな。

波音リツ

わしは、この女のした事が悪いとは思うていぬ。せねば、饑死をするのじゃて、仕方がなくした事であろ。

あいえるたん

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