start end

title

第一夜 こんな夢を見た。腕組をして枕元に坐っていると、仰向きに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。

春日部つむぎ

女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。

春歌ナナ

真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。

ナースロボ_タイプT

しかし女は静かな声で、もう死にますと判然はっきり云った。自分も確かにこれは死ぬなと思った。

白上虎太郎

そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。

もち子さん

死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。

後鬼

大きな潤いのある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。

四国めたん

その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮やかに浮かんでいる。

波音リツ

自分は透き徹るほど深く見えるこの黒眼の色沢つやを眺めて、これでも死ぬのかと思った。

猫使アル

それで、ねんごろに枕の傍へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。

雀松朱司

Books

檸檬 NEW

梶井基次郎

夢十夜

夏目漱石

走れメロス

太宰治

雨にも負けず

宮沢賢治

羅生門

芥川竜之介